12月19日の「政策決定会合」において、日本銀行は政策金利(無担保コール翌日物金利)を従来の「0.5%程度」から「0.75%程度」に引き上げることを全員一致で決定しました。これは30年ぶりの金利水準となりますが、植田和男総裁はこれに特別な意味を持たせるよりも、現在の物価環境に即した調整であることを強調しています。

1. 利上げの主眼:賃金と物価の好循環への確信

利上げの最大の根拠は「賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズム」が維持される確度が高まった点にあります。
  • 賃上げの見通し:
  • 労働需給の引き締まりや高い企業収益を背景に、来年の春闘においても今年に続きしっかりとした賃上げが実施される可能性が高いと判断されました。企業の積極的な賃金設定行動が途切れるリスクは低いと見ています。
  • 物価の安定目標:
  • 基調的な物価上昇率が2%の目標と整合的な水準で推移するという見通しの確度が高まったため、金融緩和の度合いを調整することが適切であると結論付けられました。

2. 外部環境の評価:米国経済の強靭性と不確実性の低下

前回の会合(9月)で据え置きの要因となった海外経済の不透明感が、一定程度解消されたことが今回の背中を押しました。
  • 米国経済:
  • 個人消費の堅調さやAI関連の設備投資の増加により、経済全体の下振れリスクが一頃より低下したと評価しています。
  • 関税政策の影響:
  • 各国の通商政策による不確実性は残るものの、現時点で日本の製造業の収益や雇用・賃金に深刻な波及は見られず、企業の先行き不透明感は薄れてきているとの認識です。

3. 今後のスタンス:「中立金利」への模索と緩和の継続

今回の利上げ後も、実質金利は依然として「大幅なマイナス」であり、緩和的な金融環境は維持されると説明しています。
  • 中立金利との距離:
  • 中立金利(景気を熱しも冷やしもしない金利水準)の推計値には幅がありますが、現在の0.75%はその下限にすら「まだ少し距離がある」という認識です。
  • 追加利上げの可能性:
  • 今後も経済・物価の見通しが実現していくのであれば、その改善度合いに応じて、引き続き政策金利を引き上げていく方針を明言しました。

4. 質疑応答での主な論点

  • 円安の影響:
  • 最近の円安による輸入価格の上昇リスクが指摘されており、物価への上向きの影響を注視していく姿勢を示しました。
  • 実体経済への影響:
  • 住宅ローン(特に固定金利の長期分)への影響は否定しませんでしたが、企業収益や賃金の伸びとの「総体」で判断すべきとしています。
  • 中小企業の動向:
  • 金利上昇や賃上げによるコスト増に対し、中小企業が追随できるか、あるいは倒産動向に変化がないかを高頻度データでチェックしていくとしています。

結論

今回の会合は、日銀が「米国経済の失速リスク」よりも「国内の賃金・物価の底堅さ」を重視し、金利ある世界への移行を一歩進めた歴史的な転換点と言えます。総裁は、利上げを行いつつも、経済をサポートする緩和的な姿勢を崩さないという、極めて繊細なバランスを取りながらの政策運営を強調しました。