政府は11月27日、年末の中小企業融資の円滑化に関し金融庁で意見交換会を開催。全国の民間・政府系金融機関のトップらが出席し、政府側と意見を交わした。信金業界からは、平松廣司全信協会長(かながわ信金会長)が業界を代表して2項目の意見を述べた。
片山さつき・内閣府特命担当大臣(金融)
片山大臣は、物価高や人手不足などで厳しい事業環境にある中小企業に対し、金融機関は単なる資金繰り支援にとどまらない「個別の実情に応じた寄り添った支援」を徹底するよう要請。
事業再生・経営改善の強化においては、中小企業にとって最も難しい課題である経営改善や事業再生への支援ニーズが高まっているとし、金融庁として「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の実効性を強化する施策を講じるとした。
経営者保証改革では、経営者の「果敢なチャレンジ」を後押しするため、経営者保証に依存しない融資の促進が重要だと強調。既存の個別保証契約についても、金融機関に対し、将来の保証解除に向けた理由や道筋を事業者に説明し記録するよう監督指針を改正する方針を示した。
地域金融力強化では、これらの施策を含む「地域金融力強化プラン」を年内に策定し、地域経済の成長に向けた施策を強力に推進すると締めくくった。
信用金庫からの意見表明(平松廣司・全国信用金庫協会会長)
全銀協、地銀協、第二地銀協に続き信用金庫業界を代表して平松全信協会長が意見表明をした。
平松会長の発言(全文)
本日は、片山大臣をはじめ政府関係担当の皆様との意見交換会の機会を設けていただき、まことにありがとうございます。信用金庫を代表して、事業者支援及び金融の円滑化に関する業界の取り組みなどについて申し述べたいと思います。
我が国経済は、雇用所得環境の改善等により緩やかに回復基調にあると言われておりますが、私ども信用金庫の取引先である中小企業、とりわけ小規模事業者におきましては、米国の関税措置の影響や物価高、そして人手不足や賃上げなどの対応課題が重なり、引き続き厳しい状況下にあります。
私ども信用金庫がこのような取引先、中小企業に対して、資金繰り支援にとどまらず、課題解決に向けたコンサルティング、各種支援機関との連携・紹介など、取引先の実情に応じたサポートを引き続き実施してまいる所存です。
金融庁におかれましても、地域における地域金融機関の役割や重要性を踏まえ、現在、「地域金融力強化プラン」を検討いただいていることについて、この場を借りて御礼を申し上げたいと思います。同プランが地域金融機関のさまざまな取り組みの後押しとなるよう期待しております。
その上で、本日は、現下の現状を踏まえまして、2点申し述べさせていただきたいと思います。
1つ目は、「中小企業の人手不足の関連」についてです。
先ほども申し上げましたとおり、私どもの取引先の多くが人手不足、採用難に直面しております。その中でも圧倒的に多いのは現場職員の不足であり、特に建設業やサービス業、製造業などで非常に多く聞かれています。このほかにも経営人材の確保が課題として寄せられています。信用金庫においても、取引先中小企業に対して人材紹介業や人材マッチングであったり、人手不足を補うための省力化・デジタル化支援、これらに関連する補助金サポート等に取り組んでいるところであります。
関係当局におかれましても、レビキャリやプロフェッショナル人材事業であったり、省力化、デジタル化支援など、さまざまな施策を設けられておりますが、地方公共団体とも連携いただき、引き続き中小企業、とりわけ小規模事業者にとって使いやすい施策を提供いただきますようお願い申し上げます。
2つ目は、「中小企業の価格転嫁、賃上げ」についてです。
価格転嫁につきましては、昨年の意見交換会でも申し上げましたが、関係当局の御尽力がありまして、私どもの取引先においてもある程度価格転嫁が進んできていると認識しております。しかしながら、価格転嫁が追いつかないほどのさらなる物価上昇であったり、また米国の関税措置の影響、そして最低賃金の引き上げを初めとする賃上げに対応で、中小企業は非常に厳しい状況にあります。
政府におかれましては、既に賃上げにかかわる政策パッケージ等を把握していただいておりますけれども、引き続き中小企業へ価格転嫁や賃上げを実施できるよう、環境整備や各種施策の提供をお願いいたしたく存じます。
いろいろと申し上げましたが、本日の片山大臣のご発言をはじめ、意見交換会の内容等につきまして、速やかに全国254の信用金庫に伝え、資金繰りや事業者支援に取り組んでいくよう改めて周知を図りたいと思います。
本日はありがとうございました。
質疑応答
質疑応答の時間で、金子大臣政務官と山下中小企業庁長官が
平松全信協会長の要望に応える形で応答した。
1. 金子容三 大臣政務官(人材確保と新たな融資制度)
金子政務官は、地域の中小企業における経営人材の不足が大きな課題であると述べた。
- 人材不足への対応:株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)のプラットフォームを活用した、地域の事業者と大企業の人材マッチングを推進している。このプラットフォームは地域銀行が全て登録済みで、信用金庫・信用組合の登録も拡大し、累計成約件数は250件を超えているとし、さらなる利用促進を金融機関に要請した。
- 起業家資産担保権の導入:事業の実態や将来性に着目した融資の選択肢として、2025年5月施行予定の法律に基づき、事業全体を担保とする「事業瑕疵担保権」が導入されることを紹介した。制度の本質に沿った質の高い取り組みを後押しするため、金融機関向けに勉強会を開催していると述べた。
2. 山下隆一 中小企業庁長官(価格転嫁と賃上げ支援)
山下中小企業庁長官は、中小企業の価格転嫁と賃上げに関する取り組みに言及した。
- 価格転嫁の徹底:中小小企業者が収益性を確保するためには価格転嫁の徹底が不可欠であるとし、適用新法(来年1月施行)の厳正な執行に努めると表明した。また、地方の中小小規模事業者の賃上げに不可欠な官公署との関係適正化も進めるとした。
- 生産性向上と賃上げ支援:成長投資を含む生産性向上や省力化投資の支援、事業承継基盤の強化を図ると述べた。さらに、商工会・商工会議所などによる現場の支援をこれまで以上に行うなど、賃上げ支援のための政策を総動員すると強調した。