貴金属業界で30年以上の経験を持つ専門家アンディ・シェクトマン(Andy Schectman)氏の最新の意見を分析しました。以下に主な論点、主張、そしてバンク・オブ・アメリカ(BofA、写真:米国本部)に関する見解を解説します。
主な論点と主張
シェクトマン氏の主張は、現在の金融システムが大きな転換点を迎えており、その中で金や銀などの現物資産の重要性がかつてないほど高まっているという点に集約されます。彼は、公式な市場データや報道の裏で、より深刻な事態が進行していると分析しています。
主な論点は以下の通りです。
1. 金融システムの再編とドルの終焉:
現在のFiat通貨(法定通貨・不換紙幣)による金融システムは信頼を失い、新しいブレトン・ウッズ体制のような「金融リセット」が目前に迫っていると主張しています。この新しい金融システムで、米ドルを保有し続けることは最もリスクが高い選択肢の一つだと考えています。
2. 貴金属の本当の価値と戦略:
BIS(国際決済銀行)のバーゼルⅢによる金の「Tier 1資産化」(リスクウェイト・ゼロ)によって、金や銀を保有する目的は、利益を追求する「return on money」ではなく、システム危機から資産を守る「return of money(資本の返還)」であると強調しています。彼は戦略として、金と銀の交換比率が45対1程度(現在、100対1程度)に是正された時点で、銀を売って金に交換することを計画しています。最終的に金が新しい金融システムの基軸になると予測しているためです。
3. 現物引き渡しの加速と市場の逼迫:
COMEX(商品取引所)では、金、銀、プラチナにおいて歴史的な規模での現物引き渡しが続いています。これは、参加者がペーパー資産(デリバティブ商品等)を信用せず、物理的な資産を確保しようとする動きが加速している証拠だと指摘しています。プラチナ市場では、現物価格が先物価格を上回る「逆鞘(backwardation)」が発生しており、これは深刻な現物不足を示す不吉な兆候だと述べています。
4. 中央銀行とBRICs諸国の動向:
世界各国の中央銀行による金の購入量は公式発表をはるかに上回り、実際には3〜4倍、中国に至っては10倍も過小評価されている可能性があると指摘しています。中国などの国々は、市場に影響を与えずに不透明な形で(鉱山から直接購入するなど)現物を買い集めていると分析しています。
バンク・オブ・アメリカは経営破綻するのか
シェクトマン氏は、バンク・オブ・アメリカが銀の価格高騰によって深刻な経営危機に陥る可能性が十分にあると考えています。その理由は以下の通りです。
- 巨大な銀の空売りポジション: 故テッド・バトラー氏の分析を引用し、バンク・オブ・アメリカが10億オンスという天文学的な量の銀の空売りポジションを抱えている可能性があると指摘しています。このポジションは、まだ清算されていないと見ています。
- 存亡に関わる脅威: 特に、ハイテク兵器の製造に大量の銀を必要とする軍産複合体が、安価に銀を調達するために価格を意図的に低く抑えてきた可能性があると示唆しています。この価格抑制のゲームは終焉に近づいている可能性があるとも述べています。この巨大な空売りポジションは、銀価格が上昇し続ける中で、同行にとって「存亡に関わる脅威(existential threat)」になると繰り返し述べています。
- 「身代わりの羊」になる可能性: もし西側の大手金融機関が破綻するような事態になれば、バンク・オブ・アメリカがその「身代わりの羊(sacrificial lamb)」として「うってつけだ(certainly do the trick)」と発言しています。
- 過去の教訓: 2008年頃に大手投資銀行ベアー・スターンズが銀の空売りによって経営破綻に追い込まれた事例を挙げ、同様のことが大手銀行に起こらないと考えるのは「馬鹿げている(silly)」と主張しています。ベアー・スターンズの破綻は、リーマン・ブラザーズの破綻へとつながり「リーマンショック」が起きました。
- 金融システム全体への波及: バンク・オブ・アメリカの破綻は、商品市場、銀行システム、基軸通貨であるドルシステム全体に計り知れない「衝撃波(shockwaves)」を与えると予測しています。
以上のことから、シェクトマン氏はバンク・オブ・アメリカが抱えるリスクを極めて深刻に捉えており、その破綻が金融システム全体の危機を引き起こす「引き金(trigger)」になり得ると考えていることがわかります。
本紙補足:2025年7月現在、東京の貴金属取り扱い店においても「銀地金」が深刻な在庫不足に陥っているようです。
そもそもバーゼルⅢは、世界で活動する「民間商業銀行への金融規制」であるところ、中央銀行が率先して金を買い集めていることに、日本人は注意を払うべきです。逆に言うと、日本の地域金融機関が〝Tier 1資産〟である金現物(physical gold)の保有に全く関心がないことが、不思議なくらいです。