元ヘッジファンドマネージャー、著作家のマシュー・パイペンバーグ氏は、グローバル・マクロ経済の文脈として、日本の金利上昇による円キャリートレードの巻き戻しが、米国の金融システムに深刻なリスクをもたらしていると分析しています。
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分析概要
1. ゴールドのパラダイムシフト
パイペンバーグ氏は、金市場を「日々の値動きに一喜一憂するトレーダーの視点」ではなく、「長期的な富の保全を目指す投資家の視点」で捉えるべきだと主張しています。- ペーパー通貨の衰退と金の台頭: 法定通貨(Fiat Money)の価値低下(Debasement)が進行する中、金は単なる一つのアセットクラスを超え、「新しい世界的な信頼の担保(リザーブ・アセット / トレード・セトルメント・アセット)」としての地位を確立しつつあります。
- 中央銀行による記録的な金買い: 2022年のウクライナ情勢におけるドル資産の武器化を契機に、各国中央銀行による金の買い付けペースが激増しており、中央銀行は現在、米国債よりも多くの金を保有する傾向にあります。また、2026年時点でも中央銀行の金積み立てペースは過去最高を記録しています。
2. 中国の長期戦略と金価格の「西から東への移行」
パイペンバーグ氏は、世界経済の多極化(中国を中心とする東側の台頭)と中国の動きが重要な論点であるとしています。- 中国の長期的な金蓄積: 中国人民銀行は長期間にわたって総量として金購入を継続しており、膨大な量の金を輸入・蓄積しています。また、中国の一般市民も株式よりも金ETFを多く保有するなど、長期的な視点で通貨の信用不安に備えています。
- 香港における新しい清算・取引拠点の創設: これまで欧米(シカゴのCMEやニューヨークのCOMEX)のペーパー先物契約によって支配・操作されてきた金価格の価格発見メカニズムに対し、中国は香港に物理的な実物資産をベースとした新しい決済・清算ハウスを設立しました。これにより、金の価格決定権がニューヨークから上海・香港(東側)へシフトする「Sea Change(歴史的転換点)」が起きていると指摘しています。
3. 円キャリートレードの終焉と米国債市場の危機
- 米国債の売り圧力: 長年ゼロ〜マイナス金利だった日本から低利で資金を借り入れて米国の資産(S&P500や米国債など)に投資する「円キャリートレード」が、日本の金利上昇によって転換点を迎えています。日本政府は円安を阻止し自国債(JGB)の利回りを抑えるため、米国債を大量に売却せざるを得ない状況に追い込まれており、これが米国債の価格下落(利回りの上昇)を招いています。
- 債券市場の崩壊リスク: 米国の公的債務が40兆ドル規模に膨れ上がる中、その多くが短期間で高金利での借り換えを迫られています。金利上昇により1日あたりの国債利払い費が巨額に膨らんでおり、これがさらにドルの価値低下を加速させる悪循環を生んでいます。
4. ペーパー資産から実物資産への逃避
パイペンバーグ氏は、現在の金融市場を「S&P500という最後の良いNarrative(物語)」が支えているものの、AIバブルやプライベート・クレジットの懸念を含め、非常に危うい状態にあると警告しています。- トレーダーの視点と投資家の視点の違い: 短期的な価格の上下に翻弄されるトレーダーとは異なり、長期投資家は中央銀行や大口の「クジラ」と同じ行動をとるべきだと主張します。COMEXなどが作り出す「ファイアセール(投げ売り状態)」は、むしろ実物の金を安く蓄積する絶好の機会であると捉えています。
- ドルの支配力の終焉と金の将来価格: これは「アメリカや米ドルの消滅」を意味するのではなく、過度な信用創造と債務拡大によってドルが再評価(リプライス)されるプロセスに他なりません。その結果、金は今後数年のうちに1万5000ドルから2万ドル水準へと上昇する強力な強気相場(Secular Bull Market)にあると結論づけています。
※本まとめは、オリジナル音声の書き起こし内容にのみ基づいています。
マシュー・パイペンバーグ氏(右)
Google GeminiによるAI生成画像
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