ジョンズ・ホプキンス大学のスティーブ・ハンケ教授は、アラブ首長国連邦(UAE)のOPEC離脱という衝撃的なニュースを起点に、中東情勢の変化、米国の政策ミス、そして金や原油の今後の展望について深く掘り下げています。
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分析概要
1. UAEのOPEC離脱:経済合理的かつ地政学的な決断
ハンケ教授は、UAEの離脱発表は「衝撃」ではなく、論理的な帰結であると指摘します。- 将来の価格下落予測: UAEは長期的に原油の実質価格が下落すると予測しています。教授のモデルによれば、将来の価値が下がる資源は「今」より早く汲み上げて売却するのが最適であり、生産枠(クオータ)を強いるOPECは足かせとなっていました。
- 財産権の不確実性: 中東での戦争(米国・イスラエル対イラン)により、将来の産油施設や輸送路の安全性が脅かされています。将来の収益をより高い割引率で計算せざるを得ないため、将来価値が低下し、今のうちに生産を早めるインセンティブが働いています。
2. 米国の外交・軍事政策への批判
ハンケ教授は、現在のトランプ政権(および後述するトランプ氏の判断プロセス)を「真っ直ぐ撃てないギャング」と痛烈に批判しています。- 意図せぬ結果の無視: 米国はイランとの戦争を開始する際、その直接的な予算コストすら把握しておらず、OPECの崩壊や中東諸国の離反といった「意図せぬ結果」を全く予測できていなかったと指摘します。
- 不確実な開戦動機: イランの核開発阻止という大義名分についても、イラク戦争時の「大量破壊兵器」と同様の、根拠の薄いイスラエル側のプロパガンダに基づいている可能性を懸念しています。
3. 「新世界秩序」における勝者と敗者
進行中の中東情勢により、世界のパワーバランスが劇的に変化していると教授は分析します。- 敗者(米国): 地政学的な影響力を失い、同盟国からの信頼も低下しています。
- 勝者(イラン・ロシア・中国): イランはホルムズ海峡の支配力を強め、地政学的に勝利しつつあります。ロシアは中東からの供給不安による資源価格上昇の恩恵を受け、中国はBRICSやグローバル・サウスを率いて米国からの離脱を加速させています。
4. インフレと通貨:ドルの王座と供給の過剰
- ドルの支配力: 脱ドル化が囁かれていますが、教授は「王(ドル)を王座から引きずり下ろすのは極めて困難」とし、現時点でのドル代位論は「熱風(Hot Air)」に過ぎないと見ています。
- 根強いインフレ: インフレは金利の問題ではなく「マネーサプライ(通貨供給量)」の問題であると強調します。銀行の融資が増加し、マネーサプライが加速しているため、インフレの「魔神」はまだ瓶の中に収まっておらず、今後も苦痛が続くと予測しています。
5. コモディティ予測:金と原油の急騰
- 原油: ホルムズ海峡の封鎖などによる供給ショックに対し、需要の減少が追いついていません。在庫が取り崩される中で価格スパイク(急騰)が起きる可能性が高く、短中期的に強気(ロング)の姿勢を推奨しています。
- 金(ゴールド): 現在は価格調整・固めの時期ですが、依然として「強気相場(世俗的ブルマーケット)」の中にあります。最終的には1オンスあたり6000ドルから7000ドルに達するという教授の長期予測は維持されており、中央銀行(特に中国)の旺盛な買いが支えとなっています。
結論
スティーブ・ハンケ教授の主張の核心は、「米国主導の無計画な介入が中東の均衡を壊し、産油国の経済行動を変化させ、結果として資源価格の高騰と、中国・ロシアを中心とした新たな国際秩序の台頭を招いている」という点にあります。投資家に対しては、マネーサプライの増大と地政学リスクを背景に、金や原油といった実物資産への強気な姿勢を崩していません。
スティーブ・ハンケ教授(右)
ChatGPTによるAI生成画像