Wellington Altis Private Wealthのチーフ・マーケット・ストラテジストで経済学者のジェームズ・ソーン博士は「西側諸国は巨額の債務を返済するために、今後数年間にわたり資産価格を人為的につり上げる『リフレーション政策』を取らざるを得ない」というものです。
ソーン博士は、これがAIとエネルギーインフラを中心とした「CapEx(Capital Expenditure:設備投資)スーパーサイクル」を引き起こし、最終的には米国政府が債務を帳消しにするために金(ゴールド)の公定価格を大幅に引き上げる「ブレトンウッズ2.0」につながる可能性があると主張しています。
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分析概要
1. 巨額債務を「リフレーション」で解決
ソーン博士は、西側諸国が「ナポレオン戦争レベル」の過剰な債務を抱えていると指摘します。この問題を解決するには「戦争」か「成長による脱却」しかなく、博士は米国が後者を選ぶと予測しています。その手段が「リフレーション(資産価格の再膨張)」です。ソーン博士は、政府と中央銀行が意図的に流動性を供給し、インフレを問題視せず低金利政策を維持することで、すべての資産価格(株式、債券、不動産、金、暗号資産)を緩やかに上昇させ、債務の実質的価値を目減りさせようとすると分析しています。
2. 供給され続ける「流動性」
このリフレーション政策の恩恵を最も受けるのが株式市場であり、博士はS&P 500が8000に達する可能性があると予測しています。- 強気相場の根拠:ソーン博士は、この強気相場が2026年春までにS&P 500を7400~7500まで押し上げると見ています。その理由は、ミレニアル世代が本格的な投資年齢に入ったという人口動態の変化 と、市場が20%の急落(4月に発生)を経てサイクルをリセットしたためです。
- 流動性の供給:強気相場はバリュエーション(割高感)ではなく、流動性が引き締められることで終わります。しかし博士は、政府閉鎖の終了(インタビューは米国政府閉鎖40日目の時点 )、量的引き締め(QT)の終了(12月予定)、FRBの利下げ(2%台後半まで)により、今後も流動性が供給され続けると予測しています。
3. AIバブルとエネルギーのボトルネック
ソーン博士は、現在のAIブームが1990年代のドットコム・バブルとは異なり、「不可欠なインフラ」への投資であると主張します。- AIの本質的価値:AIの本質的価値はまだ誰にも分からず、情報が不透明な時は「最高のストーリーを語る者」が市場をリードします。
- バブルの正常性:「バブル」は、鉄道(1890年代)のように、大規模な技術革新が経済に導入される際の「正常な進化的プロセス」であると博士は述べています。
- エネルギーインフラ:AI軍拡競争の真の基盤は「安価で安全なエネルギー」です。米国は、この点で原子炉建設などを進める中国に大きく遅れをとっており、経済の「リワイヤリング」(電力網、パイプライン、原子炉の建設)が急務となっています。これこそが「CapExスーパーサイクル」の中核であると指摘しています。
4. ドル体制の維持と「ブレトンウッズ2.0」
ソーン博士は「米ドル体制の終わり」という一般的な見方を「間違っている」と否定します。世界の金融システムの「配管」は依然として米ドル建てです。しかし、米国がロシア資産を凍結しドルを「武器化」したことで、各国中央銀行は賢明にも金(ゴールド)やビットコインへの分散投資を進めていると分析しています。
博士が最も重要視しているのは、この金価格の上昇(インタビュー時点で4100ドル )に対し、中央銀行が売り介入や証拠金引き上げを行わず、むしろ買い支えているという事実です。博士は、米国が「債務の利払いが軍事費を上回る」という「帝国の終わりの兆候」に直面していると指摘。その最終的な解決策として、米政府が「保有する金の公定価格を(現在の簿価1オンス42ドルから)大幅に引き上げて評価替えし、資産を増やして債務を返済する」というシナリオ、すなわち「ブレトンウッズ2.0」を予測しています。
ジェームス・ソーン博士のスクリーンショット
米ニューハンプシャー州ブレトン・ウッズのランドマーク、マウント・ワシントン・ホテル。ブレトン・ウッズ協定は1944年、ここで締結された。(Wikipediaより)