DoubleLine Capitalチャンネルの「Jeffrey Gundlach & David Rosenberg on the Macro Outlook, Bonds and Inflation」(マクロ経済の展望、債券とインフレ)のAI分析です。

Jeffrey Gundlach(ジェフリー・ガンドラック)氏が、エコノミストのDavid Rosenberg(デビッド・ローゼンバーグ)氏のインタビューに応じ、マクロ経済と市場見通しについて語りました。
「債券王」ガンドラック氏の主な主張は「我々は『ドル安』という新しい局面に突入しており、伝統的な景気後退指標は機能不全に陥っている。FRB(連邦準備理事会)は市場(特に2年債)に追随して利下げを続けるしかなく、次の金融危機の震源地はプライベート・クレジット(私募債務市場)になる」というものです。

動画再生回数は、1日で2万回以上。(画像は、デビッド・ローゼンバーグ氏とジェフリー・ガンドラック氏のスクリーンショット)

分析概要

📉 FRBは市場に追随している

ガンドラック氏は、政府機関閉鎖によって経済データが不足していても、FRBは常に「市場」という最良のデータを持っていると指摘します。
  • 2年債がFRBを導く:過去20年以上にわたり、FRBの政策変更は常に米国2年国債の利回りに先行されてきたと主張します。2006年の利下げ、2018年の利上げ停止、2021年の利上げ開始のすべてにおいて、2年債利回りが先に動いていました。
  • 現状のシグナル:現在、2年債利回り(約3.53%)は政策金利(約4.125%)を50ベーシスポイント以上下回っており、市場がFRBに対してさらなる利下げを強く要求していることを示しています。
  • 政治的圧力:パウエル議長の再任の可能性は「極めて低い」と見ており、トランプ大統領は「私の望む金利にするか?」という質問だけで次期議長を選び、政治的にインフレ的な政策(マイナス実質金利)を強要する可能性が高いと予測しています。

📊 景気後退指標の機能不全と「K字型経済」

ガンドラック氏は、過去に信頼されてきた景気後退の先行指標が、ことごとく「誤ったシグナル」を出しているか、機能不全に陥っていると指摘します。
  • 機能しない指標:2年債と10年債のイールドカーブの逆転とスティープ(急傾斜)化 、失業率の3年移動平均線上抜け、「銅:ゴールド比率」の崩壊(10年債利回り1%を示唆)など、過去の鉄板指標が景気後退を示唆しているにもかかわらず、景気後退は(まだ)起きていません。
  • 理由(K字型経済):これらの指標が機能しない理由は、経済が「K字型に歪んでいる」ためだと分析します。ハイテク、AI関連の設備投資、富裕層の資産効果で経済の一部は好調ですが、中間層以下は壊滅的な状況にあると指摘します。
    1. 住宅市場:全米の世帯収入(税引前)の中央値に対し、住宅コストの割合はパンデミック前の28%から48%に上昇しました。ロサンゼルス大都市圏では90%に達しており、税引き後では実質100%だと指摘しています。
    2. 消費者心理:「ミシガン大学消費者信頼感指数」は、金融危機時と同レベルの「ひどい」水準にあります。

💥 次の危機の震源地は「私募債務市場」

ガンドラック氏は、次の金融危機の震源地として「プライベート・クレジット(私募債務)」市場を名指しし「他に候補はない」と断言しました。
  • 「低ボラティリティ」という幻想:プライベート・クレジットは、時価会計(Mark-to-Market)が行われないため、見かけ上のボラティリティが人為的に低く抑えられているだけであり、その優位性を説く議論は「ばかげている」と批判しています。
  • 「究極の罪」:最も危険な兆候として、これらの本質的に「非流動性」の資産を、個人投資家(リテール)向けのETF(上場投資信託)に組み込もうとする動きを「究極の罪(ultimate sin)」と呼び、四角い穴に丸い釘を打つようなものだと強く警告しています。

🌍 グローバルな投資戦略:「ドル安」レジームへの対応

ガンドラック氏は、米国が「ドル安レジーム」に入ったと確信しており、これが投資戦略の前提であると述べました。
  • ドルの反転:過去の株価調整局面ではドル高が起きていましたが、今年(2025年)3月~4月の「関税パニック」では株価下落とドル安が同時に起こりました。
  • 資金流出:過去18年間で25兆ドルに達した海外から米国への資金流入が、最近の四半期で流出に転じていることを指摘しています。
  • 中央銀行の金買い**:ゴールドが4000ドルを超えているのは、投機家ではなく中央銀行が買っているためです。彼らは安い価格(300~1200ドル)で売り、今になって高い価格(3000~4000ドル)で買い戻しています。
**補足:「中央銀行の金買い」主に1990年代後半から2000年代初頭にかけて、多くの中央銀行、特に西側諸国の中央銀行(例:イギリス、スイスなど)が、金(ゴールド)を大量に売却した出来事を指しています。