Principles by Ray Dalio チャンネルのRay Dalio氏からAndrew Ross Sorkin氏へのインタビュー「Ray Dalio & Andrew Ross Sorkin on His New Book "1929" and How Debt Drives Every Crash」(赤字がすべてのクラッシュを引き起こす)のAI分析です。

世界最大のヘッジファンドBridgewater創設者のRay Dalio(レイ・ダリオ)氏がCNBCアンカーで作家のAndrew Ross Sorkin(アンドリュー・ロス・ソーキン)氏とソーキン氏の新刊『1929年』の内容について語り合いました。

Ray Dalio氏とAndrew Ross Sorkin氏の対談は、Sorkin氏の新著『1929年』を基に、1929年の大恐慌と2008年の金融危機、そして現代のAIブームやプライベートクレジット市場との類似点を比較・分析するものです。
対談の主な論点は、Sorkin氏が「物語(キャラクター)」の側面から歴史の類似性を探るのに対し、Dalio氏は「メカニクス(仕組み)」の観点から、全ての金融危機が「債務(信用)」と「通貨」のアンバランスという同じ根本原因によって引き起こされると主張する点にあります。

動画再生回数は、1日で2.7万回以上。(画像は、ダリオ氏とソーキン氏のスクリーンショット)

分析概要

1929年の物語:今日のキャラクターとの類似性

Sorkin氏は、1929年の登場人物が、驚くほど現代の人物像と類似していると指摘します。
  • チャーリー・ミッチェル (National City Bank / 現Citigroup):今日のジェイミー・ダイモンやマイケル・ミルケンに相当する人物。彼は、一般大衆が株式を信用(マージン)で購入できるようにした革命家であり、時に10対1のレバレッジを提供し、信用バブルの火付け役となりました。
  • カーター・グラス (米国上院議員):今日の「エリザベス・ウォーレン」のような規制推進派。彼はミッチェルの投機的な信用供与を「ミッチェリズム」と呼び、経済全体を危険にさらしていると公に非難した「カサンドラ(警告者)」でした。
  • ジョン・ラスコブ (General Motors):今日の「イーロン・マスク」のような時代の寵児。彼は自動車ローンや家電ローンといった消費者信用(クレジット)をアメリカに定着させました。彼は「誰もが金持ちになるべきだ」というスローガンを掲げ、アメリカン・ドリームを「堅実な成功」から「一攫千金のファンタジー」へと変貌させたとSorkin氏は分析しています。

バブルの「メカニクス」:Dalio氏が語る3つの材料

Dalio氏は、Sorkin氏の物語的アプローチに対し、全てのバブルには共通する「メカニクス(仕組み)」、すなわち3つの「材料」が存在すると主張します。
  1. 「奇跡」(新しいテクノロジー) 1920年代は、自動車、電化(GE)、ラジオとテレビ(RCA)、航空機、映画といった「奇跡的」な技術革新が次々と現れました。Dalio氏は、当時のRCAを「その時代のNvidia」であり「ミーム株」だったと指摘し、Sorkin氏も現在のAIブームとの類似性を認めています。
  2. 「信用」(レバレッジと債務) これらの「奇跡」への投資は、ミッチェルやラスコブが提供した信用(債務)によって賄われました。Dalio氏は、「購買力は『通貨』からではなく『信用』から生まれていた」と指摘します。
  3. 「金融引き締め」(ブレーキ) 最終的に、中央銀行や規制当局が、過熱した信用を抑え込もうと「ブレーキをかけ」始めます。
Dalio氏は、この3つの材料が1907年の恐慌、1929年の大恐慌、1990年の日本のバブル崩壊、そして2008年の金融危機など、彼が研究したすべての危機に共通していると断言しています。

恐慌のメカニクス:1929年と2008年の比較

Sorkin氏は、1929年の暴落後、フーヴァー大統領による増税や関税の導入、FRB(連邦準備理事会)の対応の遅れといった「政策の失敗のドミノ」が恐慌を悪化させたと説明します。

Dalio氏は、これも典型的な「メカニクス」であると反論します。彼によれば、暴落(バスト)は常に、債務者(お金を借りた人)が債権者(お金を貸した人)に「通貨(当時は金)」で返済しなければならない「スクイーズ(圧搾)」を引き起こします。この返済が不可能になると、システムは崩壊し、政府は最終的に通貨を切り下げる(1933年のルーズベルトの金本位制離脱)しかなくなります。

2008年の危機において、大恐慌の研究者であったベン・バーナンキFRB議長は、このプロセスを「圧縮」しただけだとSorkin氏は指摘します。Dalio氏も同意し、2008年の対応(ゼロ金利と量的緩和)は、1933年にルーズベルトが行った債務のマネタイズ(中央銀行による債券購入)と「同じ行動」であり、ただ「より速く」実行されただけだと述べました。

Dalio氏は、現在の中央銀行家が知る唯一の「治療法」は「イージー・マネー(金融緩和)」であると結論づけています。

現代のリスクと日本の教訓 🇯🇵

対談では、1929年と現代の決定的な違いとして、政府の財政赤字が挙げられました。1929年当時、米国政府は財政黒字でした。Dalio氏は、2008年以前は債務が民間部門に集中していたのに対し、現在は政府部門に移行しているが、本質的な「債務が多すぎる」という問題は変わらないと指摘します。

Dalio氏は、最も興味深い危機として、ワイマール共和国のような「インフレを伴う恐慌(Inflationary Depression)」を挙げます。これは、政府があまりにも多くの債務を抱えているために、インフレ下でも通貨の印刷(金融緩和)を停止できない場合に発生します。このプロセスは、中央銀行自身が(保有する債券の価値下落により)損失を被り、その損失を埋めるためにさらに通貨を印刷するという悪循環(ネガティブ・キャッシュフロー)に陥ることで加速すると説明しました。

また、Dalio氏は、1990年代の日本のデフレの教訓にも言及し、現在の中国が直面している状況との類似性を指摘しています。

現代のバブル:プライベート・クレジットと規制緩和

Sorkin氏は、1929年当時にSEC(証券取引委員会)が存在せず、インサイダー取引や「投資プール」による株価操作(パンプ・アンド・ダンプ)が横行していたことを指摘し、これを現代の暗号資産(クリプト)やミーム株の投機と対比させます。

さらにSorkin氏は、現在の「ガードレール(規制)の撤廃」に強い懸念を示します。特に、SPACや暗号資産、そして「プライベート・クレジット」や「プライベート・エクイティ」が、十分な情報開示なしに一般大衆に販売されている(トークン化など)現状を危惧しています。

この動きは、1920年代と同様に「金融の民主化(Democratizing Finance)」、つまり「エリートだけが持っていた宝くじ(儲かる機会)へのアクセスを大衆に与える」という名目で正当化されています。 Dalio氏は、このプライベート市場の最大の特徴は「時価会計(Mark to Market)の欠如」であると指摘します。プライベート・クレジットの「美点」は、債務不履行(デフォルト)を宣言する代わりに、債務を「ロール(繰り延べ)」できることにあると皮肉を述べます。

Sorkin氏は、リスクが銀行のバランスシートから切り離されるため、システムがより安全になったのではないかと問いかけます。Dalio氏は「メカニクス」の観点からこれを一蹴し、「それは会計ゲームに過ぎない」と断言します。投資の唯一の価値は、それを売って「現金を手に入れ」「モノを買う」能力(流動性)にあります。非流動的な資産の価値をごまかしても、現実のキャッシュフロー問題は解決しないと強調しました。

両氏は、規制が不十分なままプライベート資産が公衆に解放されている現状が「厄介な問題」であるという認識で一致しました。