KITCO NEWSの「'More Cockroaches Are Coming'; DiMartino Booth Warns of a Hidden Credit Contagion Event」(「ゴキブリはまだ出てくる」ディマルティーノ・ブース氏、隠れた信用伝染イベントを警告)のAI分析です。 このインタビューは、元FRB(連邦準備理事会)インサイダーでQIリサーチCEOのDanielle DiMartino Booth(ダニエル・ディマルティーノ・ブース)氏が、現在の米国市場に存在する「2つの相反する現実」について分析したものです。

動画再生回数は、1日で17万回以上。(画像は、ダニエル・ディマルティーノ・ブース氏のスクリーンショット:右側)

分析概要

2つの現実と実体経済

ブース氏は、一方ではGMやコカ・コーラのような大企業が好調な業績見通しを発表し、株価が最高値圏で推移している現実があると指摘します。しかし、もう一方では、イングランド銀行総裁が米国の民間信用市場の混乱を2007年のサブプライム危機になぞらえて警告し、金融システムのストレスからFRBが量的引き締め(QT)の早期終了を迫られる可能性が浮上しているという、深刻な現実があるとしています。

ブース氏は、好調なGDP統計よりも、ゴールドマン・サックスさえもが注目する労働市場のデータや、一般市民(メインストリート)がクーポンを使い、節約に励んでいる実態こそが、実体経済をより正確に反映していると主張します。

信用市場の「ゴキブリ」😱

インタビューで最も強調された論点の一つが、信用市場の潜在的な「伝染(contagion)」リスクです。

イングランド銀行総裁は、米国の民間信用市場での破綻(自動車サブプライムローン:Tricolor破産など)について、「(規模が)小さすぎてシステミックではない」という見方は間違いだと警告しました。ブース氏は、これは銀行の甘い「融資基準(underwriting standards)」が根本原因であり、問題が従来の銀行システムへ波及するリスクがあると分析します。

さらに、ムーディーズのレポートを引用し、一部の地方銀行が融資を「不良債権」と分類するのを避けるため、更新時に基準を緩和する「延命と偽装(extend and pretend)」を行っていると指摘。この動きは、かつての商業用不動産(CRE)市場だけでなく、自動車ローンやクレジットカードなど消費者ローン全体に広がっていると警告します。

ブース氏は、JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOの「ゴキブリ(cockroaches)」という言葉を引き合いに出し、信用サイクルの終焉時には不正や隠れた問題が次々と露呈すると述べ、ソロモンCEO(ゴールドマン)の「個別事象(idiosyncratic)」という楽観論に反論しました。

消費者の疲弊とFRBの動向

記録的な家計債務に加え、学生ローン返済の再開などを背景に、401k(確定拠出年金)からの困難時引き出しが急増しています。ブース氏は、米国の消費が上位10%の富裕層に過度に依存している不均衡を指摘し、信用度の高いプライム層でさえ自動車ローンの延滞が増えていることから「消費者は明らかにひび割れている」と結論付けました。

政府機関閉鎖による公式統計の遅れ(データバキューム)の中 、FRBはADPなどの代替データをより重視しているとブース氏は分析します。市場はすでに10月の利下げを織り込んでおり、債券市場はインフレよりも景気後退(リセッション)を強く懸念している兆候(10年債利回りの低下)を示しています。

流動性の逼迫によりFRBがQT(量的引き締め)の停止に追い込まれる可能性は高いとしながらも、QE(量的緩和)への転換は時期尚早であるとの見方を示しました。

金(ゴールド)の急落と最終警告 ⚠️

記録的高値の直後に起きた金の急落について、ブース氏は、2020年3月にも見られた流動性クランチ(逼迫)の兆候だと指摘。マージンコール(追証)などで現金が必要になった投資家が、利益の出ている金を手放す「現金化(ダッシュ・フォー・キャッシュ)」が起きていると分析しました。

ブース氏は、自身の弱気な見解が覆される唯一の要因は、「民間企業によるAIなど未来への本格的な設備投資と、それに伴う雇用拡大」が実現した場合だと述べました。

最後に、ブース氏が現在最も注目している「破綻のシグナル」は、「CLO(ローン担保証券)のクレジット・スプレッド」であると明言。民間(プライベート)市場の問題が、公的(パブリック)な信用スプレッドの拡大に波及し始めた時が、市場全体が注目する本格的な信用イベントの始まりとなると警告しました。