エコノミストDaniel Lacalle(ダニエル・ラカージェ)氏のKITCO NEWSによるインタビュー「“It’s the Start of Silver’s Repricing”: Daniel Lacalle on the Debasement Trade」(「銀の再評価の始まり」:ダニエル・ラカージェ氏、ディベースメント・トレードを語る)のAI分析です。

ラカージェ氏は、世界経済、特に日本を含む先進国が直面している「通貨価値の毀損によるトレード(Debasement Trade)」という構造的な問題を取り上げています。これは、各国政府が巨額の債務と財政問題を解決するために、意図的に自国通貨の価値を切り下げており、その結果、投資家が法定通貨(Fiat Money)への信認を失い、金や銀、株式などの実物資産に資金を移しているという分析です。

動画再生回数は、1日で2万回以上。(画像は、ダニエル・ラカージェ氏のスクリーンショット:右)

分析概要

緩慢で永遠の危機 😱

ラカージェ氏は、現在の世界経済を「緩慢で永遠の危機(slow motion eternal crisis)」と表現し、多くの先進国が日本のような長期停滞に陥っていると指摘します。その根本原因は、各国政府が抱える巨額の債務と、それを維持するために中央銀行が行ってきた超金融緩和策にあると主張します。中央銀行は、インフレや雇用といった本来の目標よりも、政府の債務を維持すること(財政ファイナンス)を最優先しており、その結果として「インフレが政策になっている」と断じます。

この通貨価値の毀損への対抗策として、金や銀が注目されています。特に銀(シルバー)は、金に比べて出遅れていたため投資妙味があると見なされ、需給が逼迫していることもあり、今年70%以上も価格が上昇しました。ラカージェ氏はこれを、単なる投機ではなく「銀の価値の再評価が始まった」と見ています。金価格が4100ドルという記録的な水準に達したのも、中央銀行自身が米ドルやユーロなどの準備通貨(国債)への信認を失い、金を購入していることが背景にあると分析しています。

日本は「未来から来た国」🤖

ラカージェ氏は、日本の経済状況を「未来から来た国」と表現し、他の先進国が直面するであろう問題の先行事例だと位置づけています。日本は、人口動態のような構造的な課題を巨額の政府支出で覆い隠そうとした結果、生産性の成長はゼロのまま、GDPの230%を超える莫大な債務を抱えることになりました。

この「ケインズ主義の失敗実験」とも言える日本の政策は、最終的に巨額の債務という形で跳ね返ってきており、フランス、ドイツ、イギリスといった国々も数年後には同じ道をたどる可能性が高いと警告しています。政府が構造改革を避け、安易な財政出動と金融緩和に頼ることの危険性を示す教訓として、日本が引き合いに出されています。

米国の金融政策と投資家へのアドバイス

インタビューでは、連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の発言にも触れています。議長が金融引き締めの終了を示唆し、過去の政策の誤りを認めたことは、FRBが巨額の政府債務によって身動きが取れず、金融政策のコントロールを失いつつあることの表れだとラカージェ氏は指摘します。米ドルが比較的強いのは、ドル自体が健全だからではなく、円やユーロがそれ以上に問題を抱えているためで「汚れた洗濯物の中で最もきれいなシャツ」に過ぎないと述べています。

最後にラカージェ氏は、投資家に対して、インフレによって現金の価値が目減りしていくため、市場から完全に離れるのは得策ではないと助言します。ただし、経済成長に大きく依存する景気敏感セクターは避け、通貨安の進行を前提とした資産配分を考えるべきだと主張しています。そして、欧州中央銀行が進める「デジタルユーロ」のような中央銀行デジタル通貨(CBDC)の動きは、政府が国民の資産を管理し、負債を転嫁するための「グローバルリセット」の前兆である可能性があり、注意深く監視すべきだと警鐘を鳴らしました。