ドーメン氏は、現在の金融市場が極めて危険な状態にあると警鐘を鳴らしています。彼の主張は、市場操作、信頼性の低い経済データ、そして地政学的緊張という3つの主要な論点に基づいています。
動画再生回数は、1日で3万回以上。(画像は、バート・ドーメン氏のスクリーンショット)
分析概要
市場はアルゴリズムに支配されている
ドーメン氏は、現代の株式市場はファンダメンタルズによって動いているのではなく、アルゴリズムトレーダーやHFT(高頻度取引)に支配されていると断言します。これらのコンピュータープログラムは、1秒間に9万件もの取引を実行でき、個人投資家が太刀打ちできる相手ではありません。彼によると、アルゴリズムは大多数の投資家と逆のポジションを取ることで利益を上げており、意図的に「強気の罠(bull trap)」や「踏み上げ相場(short squeeze)」を作り出しています。その結果、株価が1日で20~30%も下落するような、かつては見られなかった極端なボラティリティ(変動)が常態化しているのです。ドーメン氏はこの状況を「操作」であると厳しく批判しています。
また、現在の市場はごく一握りの巨大ハイテク株によって支えられているだけであり、例えばラッセル2000に含まれる企業の約半数が利益を上げていないなど、非常に脆弱な状態にあると指摘しています。PER(株価収益率)が500倍といった異常な高値で取引されている銘柄が存在することからも、市場が過剰な投機状態にあることは明らかだと述べています。信頼できない政府統計と隠された景気後退 🙄
ドーメン氏は、ワシントンが発表する経済統計、特に雇用統計は「インチキ」であり、全く信用できないと強く主張します。一例として、2023年1月の雇用統計が51万4000人増と発表された際、統計局自身のウェブサイトでは250万人の雇用喪失が示されていたと指摘し、300万人以上もの乖離があったことを明らかにしました。彼は、このような不正確なデータによって、米国経済が過去2年間にわたって景気後退(リセッション)に陥っている事実が隠蔽されていると見ています。
地政学的リスクとドルの黄昏 💵
国際情勢も市場にとって大きなリスク要因です。ドーメン氏は、中国、インド、ロシアの連携が強化されていることに注目しています。これら3カ国だけで世界人口の36%を占めており、米国(人口比4.1%)への経済的依存から脱却しようとする動きを強めています。具体的には、これらの国々は米国債の保有を減らす一方で、金の購入を積極的に進めています。もしこれらの国々が米国への製品供給を停止すれば、米国の小売店の棚は空になり、経済に深刻な打撃を与えると警告しています。これは、米ドルの基軸通貨としての地位を揺るがしかねない、非常に危険な兆候です。
金融政策への批判と貴金属への展望
ドーメン氏は、FRB(連邦準備理事会)がインフレ対策として行う利上げは、インフレを悪化させるだけの「 極めてインフレ的(wildly inflationary)」な政策だと批判します。彼は、本当の金融引き締め(タイトマネー)とは、金利を上げることではなく、銀行が与信のある顧客に対しても融資を停止する状況だと定義しています。このような不確実性の高い時代において、ドーメン氏は金(ゴールド)と銀(シルバー)が重要な役割を果たすと予測します。彼は、金が2031年に長期的な強気相場の頂点を迎えるという自身の予測を改めて示しました。特に銀については「貧者の金」でありながら工業用金属としての需要もあるため、今後は金をアウトパフォーム(上回る成績を収める)する可能性があると見ています。
総括として、ドーメン氏は市場操作、信頼できない経済データ、地政学的緊張を背景に、市場がスタグフレーション(景気後退とインフレの同時進行)の危機に瀕していると警告し、投資家は自己防衛のために貴金属への投資を検討すべきだと強く訴えています。