Chainlink創設者のSergey Nazarov(セルゲイ・ナザロフ)氏は、ステーブルコインの爆発的な成長と、それがもたらす金融システム全体の「トークン化」という、大きな地殻変動について詳細に語っています。ナザロフ氏の主張の核心は、ブロックチェーン技術が単なる暗号資産の基盤技術から、次世代のグローバル金融システムのバックボーンへと進化しつつあるという点です。
動画再生回数は、1日で6千回以上。(画像は、セルゲイ・ナザロフ氏のスクリーンショット)
分析概要
ステーブルコインの急成長と米国債市場への影響
ナザロフ氏によれば、ステーブルコイン市場は現在数百億ドル規模から、将来的には1兆〜4兆ドル規模へ成長するポテンシャルを秘めています。特に重要なのは、これらのステーブルコインが準備金として大量の米国債を保有している点です。すでにステーブルコイン発行体は、一団体として米国債の18番目に大きな保有者となっており、その影響力は増す一方です。この動きは、「Genius Act」と呼ばれる米国の法案によってさらに加速されるとナザロフ氏は指摘します。この法律は、ステーブルコインの準備金を米国債で保有することを強く推奨しており、結果として米国債への新たな需要を創出し、世界中の人々がドル経済へアクセスする手段を拡大します。米国政府にとっても、国債の買い手を特定の国家から、世界中の数億人の個人へと多様化させることで、地政学的なリスクを分散できるという大きなメリットがあります。
金融システムの「トークン化」という革命
ナザロフ氏は、現在進行中の変化を「50年〜70年に一度起きる金融システムの再フォーマット」と表現しています。現金(ステーブルコイン)、株式、コモディティ、不動産といったあらゆる「現実世界資産(Real World Assets)」がブロックチェーン上で「トークン化」*される未来は避けられないと述べています。 トークン化された資産は、従来の金融商品にはない数多くの利点をもたらします。- 24時間365日の取引:市場が閉まることのない、グローバルでシームレスな取引が可能になります。
- 新たな担保価値の創出:従来は担保として利用しにくかった投資信託なども、トークン化することで容易に担保として活用できるようになります。
- 透明性と効率性の向上:BlackRockのラリー・フィンクCEOも指摘するように、トークン化されたシステムは、取引の透明性を劇的に高め、マネーローンダリングなどの不正を排除する力を持っています。
Chainlinkが果たす「インフラ」としての役割
この金融革命において、Chainlinkは極めて重要な役割を担っています。Chainlinkは、ブロックチェーン上のスマートコントラクトと、価格データや本人確認情報といった「現実世界のデータ」を安全に接続する「オラクルネットワーク」*です。ナザロフ氏は、Chainlinkがすでに25兆ドル以上の取引価値を支える業界標準のインフラであり、金融機関が必要とする複雑な要件(会計、セキュリティ、コンプライアンスなど)を満たすことができる唯一のシステムだと強調しています。SWIFTやUBSといった大手金融機関との提携は、既存の金融システムと新しいブロックチェーンの世界を繋ぐChainlinkの能力を証明しています。
米国の規制と国家戦略
米国政府は、このトークン化の波を国家的な好機と捉えています。ナザロフ氏は、Genius Actに続く次の重要な法整備として「市場構造法案」を挙げています。この法案は、ステーブルコインだけでなく、あらゆるトークン化された資産や暗号資産全般の法的な位置づけを明確にし、業界の健全な発展を促進することを目的としています。米国がこの変革を主導することで、インターネット時代にデータベース技術で世界をリードしたように、グローバル金融システムにおける市場シェアをさらに拡大できるとナザロフ氏は分析しています。
もはや世界は、米国の金融システム以外の選択肢がない時代ではありません。これからの競争は「どの国の金融システムが最も優れた(トークン化された)商品を提供できるか」であり、米国がリーダーシップを発揮することが、その地政学的な影響力を維持する鍵となります。
総じて、このインタビューは、ブロックチェーン技術が金融のあり方を根本から覆し、より効率的で透明性の高いグローバル経済圏を構築していくという、壮大かつ具体的な未来像を提示しています。
*トークン化:機密データを保護するために、そのデータを安全な形式に置き換える処理。
*オラクルネットワーク:ブロックチェーンという閉じた世界を、現実世界の複雑な金融システムやデータと安全に連携させるための、重要なインフラ。