経済学者で元ギリシャ財務大臣のYanis Varoufakis(ヤニス・バルファキス)氏は、このインタビューで自身の著書『テクノ封建主義』の核心的な主張を展開しています。それは、資本主義が自己変容の末に終わりを迎え、巨大テック企業が支配する新たな経済システム「テクノ封建主義」へと移行しつつあるというものです。これは過去への回帰ではなく、民主主義を脅かす未来への暗い移行であると警鐘を鳴らしています。
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分析概要
「クラウド資本」の台頭と資本主義の終焉
バルファキス氏によれば、現代の権力は、従来の生産手段(工場や機械)としての資本から「クラウド資本」へと移行しました。クラウド資本とは、AmazonやGoogleなどが保有するスマートフォン、サーバー、光ファイバー、アルゴリズムといったデジタルネットワーク全体を指します。 このクラウド資本は、従来の資本とは根本的に異なります。- 非生産性: 何かを生産するのではなく、ユーザーをプラットフォーム内に囲い込み、行動を学習させることで、市場を迂回する力を持ちます。
- レント(rent:不労所得)の復活: プラットフォームの所有者(新しい領主)は、そこで商品を販売する事業者(従来の資本家)から、売上の30~40%もの手数料を徴収します。バルファキス氏はこれを、封建時代の領主が農奴から徴収した「地代」になぞらえ「クラウド賃料(cloud rent)」と呼びます。
私たちは「クラウド農奴」である
この新しいシステムでは、私たち一般ユーザーは「クラウド農奴(cloud serfs)」と化しています。私たちがSNSに投稿し、レビューを書き、データを生成するすべての活動は、ビッグテックのクラウド資本を増強するための無償労働となっています。Facebookの歳入のうち人件費がわずか1%である事実は、その資本の大部分がユーザーの無償労働によって築かれていることの証左です。民主主義と個人の自由の危機
テクノ封建主義は、経済だけでなく社会全体を蝕みます。- 個人の自由の消滅: 若者たちは、将来の雇用主からの評価を常に意識し、SNS上で自己のペルソナを*「キュレーション(curation)」することを強いられます。これは自由な自己表現を不可能にし「自由な個人」を死に至らしめます。
- 民主主義の毒化: アルゴリズムは、ユーザーを怒らせることでエンゲージメントを高めるように設計されています。これにより社会の分断が煽られ、理性的な対話が不可能になり、民主主義の土台が崩壊します。
解決策と未来への展望
バルファキス氏は、テクノロジーを破壊する「ラッダイト運動」*を否定し、段階的な解決策を提案します。- 相互運用性の法制化: 携帯電話番号ポータビリティのように、SNSのフォロワーを他のプラットフォームに移せるようにし、企業の囲い込み力を弱める。
- プラットフォームの公有化: 自治体がUberや*Airbnbに代わるアプリを運営し、手数料を地域に還元する。
- 究極の目標: 従業員が「一人一株一票」の権利を持つ形で、クラウド資本を社会的に所有すること。
結論
テック大手の権力は絶大に見えるものの、極度に集中しているがゆえに不安定でもあると指摘します。私たちの責務は、このシステムが自壊する時に備え、民主的で公正な代替案を準備しておくことだと訴えています。*curation(キュレーション):何らかのテーマや価値観などに基づいて、事物を選択・分類・提示し共有すること
*Airbnb(エアビーアンドビー):旅行者(ゲスト)と空き部屋や家を提供する個人(ホスト)を繋ぐオンラインプラットフォーム
*ラッダイト運動:19世紀初頭のイギリスで起こった労働者による機械打ちこわし運動