2025年9月17日のFOMC(連邦公開市場委員会)後の記者会見で、FRB(連邦準備理事会)パウエル議長は、政策金利の0.25%引き下げを発表し、その背景として労働市場の軟化とそれに伴う雇用の下方リスクの高まりを挙げました。インフレは依然として目標を上回っているものの、リスクのバランスが変化したことを強調し、政策スタンスをより中立的な方向へ修正する判断を示しました。

動画再生回数は、記者会見後2時間で24万回以上。(画像は、FRB公式チャンネルのパウエル議長のスクリーンショット)

分析概要

パウエル議長の主な説明

パウエル議長は会見冒頭、FRBの責務が「最大雇用」と「物価安定」であると再確認した上で、現在の経済状況について次のように説明しました。
  • 金融政策の決定: 労働市場の減速と雇用の下方リスクを考慮し、政策金利の目標レンジを4.0%〜4.25%へ0.25%引き下げた。これは、これまでインフレ抑制に傾いていた政策のバランスを、雇用の安定にも配慮する形へシフトさせるもの。
  • 労働市場の現状: 雇用の伸びは月平均2万9000人と大幅に鈍化し、失業率も8月には4.3%へわずかに上昇した。この減速は、移民減少などによる労働供給の低下と、労働需要の軟化が同時に起きている異例の状況だと指摘。
  • インフレの見通し: インフレ率は2022年のピークから大幅に低下したものの、依然として目標の2%を上回っている。特に、関税の影響で財(モノ)の価格が上昇していることが最近のインフレ率を押し上げているとの分析を示した。ただし、この影響は一時的なものと見ている。
  • 経済成長: GDP成長率は2025年上半期に約1.5%へと、前年の2.5%から緩やかになっている。

質疑応答の概要

記者との質疑応答では、利下げのタイミングやFRBの独立性など、多岐にわたる質問が挙がりました。
  • 利下げの理由について: 今回の利下げは、経済予測自体が大きく悪化したからではなく、労働市場の「下方リスク」に対応するための予防的な「リスク管理」の側面が強いと説明。特に、若年層やマイノリティの就職が困難になっている状況への懸念を示し、経済がさらに悪化する前に行動を起こす重要性を強調した。
  • インフレ目標達成の遅れについて: インフレ率が目標の2%に戻るのは2028年になるとの予測について問われると、これはあくまで予測であり、FRBは2%の目標達成に強くコミットしていると回答。労働市場が軟化していることから、持続的なインフレが起きるリスクは以前より低下しているとの見方も示した。
  • FRBの独立性について: ホワイトハウスの職務を兼任する新任理事(スティーブン・ミラン氏)がいることについて、FRBの政治的中立性が損なわれるのではないかとの質問が複数出された。パウエル議長は、「FRBにはデータに基づき、政治的配慮なく判断するという文化が深く根付いている」と述べ、今後もその独立性は維持されると繰り返し強調した。
  • 関税の影響について: 関税がインフレを押し上げる一方で、企業のコストを圧迫することで労働市場を冷え込ませているのではないか、という指摘に対しては、その可能性を認めた。しかし、現在の労働市場の減速の主な要因は、関税よりも移民減少による労働供給の縮小が大きいとの見解を示した。
この会見を通じて、FRBがインフレへの警戒を怠らない一方で、雇用の安定をより重視する姿勢へと転換し、今後の政策はデータ次第で会合ごとに判断していく方針であることが明確に示されました。