経済評論家のPeter Schiff(ピーター・シフ)氏のポッドキャスト番組「Surprise PPI Surge Dashes September Rate Cut Hopes」を分析しました。(動画再生回数は、1日で4万回以上)
この動画の核心的な主張は、現在の米国経済が深刻なスタグフレーション(景気後退とインフレの同時進行)に陥っているという警告です。シフ氏は、政府が発表する経済データは実態を反映しておらず、事態は公式見解よりもはるかに悪いと主張しています。(画像はスクリーンショット)
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分析概要
経済データの分析と政府への不信
シフ氏はまず、先週発表された7月の雇用統計が予想を大幅に下回り、さらに5月と6月の数値も大幅に下方修正された点を指摘します。これは50年以上で最大規模の連続下方修正であり、労働市場が弱体化している明確な証拠だと述べています。トランプ大統領がこの結果を受けて労働統計局(BLS:Bureau of Labor Statistics)の長官を解任したことにも触れ、政権が不都合なデータを隠蔽しようとしていると批判します。
シフ氏の核心的な主張は、政府の経済データ(雇用統計、インフレ率、GDP)は、政権が民主党か共和党かに関わらず、常に実態より良く見えるように設計されているというものです。現実のインフレは公式発表より高く、GDPや雇用の実態は低いと彼は考えています。
今週発表されたインフレデータは、彼のスタグフレーション論をさらに裏付けています。消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)は目標の2%を上回る2.7%で高止まりし、特にコア指数は3.1%と上昇傾向にあります。さらに衝撃的だったのは生産者物価指数(PPI:Producer Price Index)で、月間で予想の0.2%を遥かに超える0.9%の上昇を記録しました。シフ氏は、生産者物価が消費者物価の先行指標であることから、今後さらにインフレが悪化することは避けられないと予測しています。
スタグフレーションの進行
これほど高いインフレにもかかわらず、連邦準備理事会(FRB)は利上げどころか、利下げの議論さえしている状況を、シフ氏は強く批判します。彼は、FRBが経済の弱さを理由に最終的には利下げに踏み切らざるを得なくなり、それがさらなるインフレを招くと見ています
彼の論点の核心は、FRBがスタグフレーション(インフレと景気後退の同時進行)という非常に困難な状況に直面しているという点にあります。
FRBが直面する2つの大きな矛盾
シフ氏によると、FRBは互いに矛盾する2つの問題に挟まれています。インフレ抑制(利上げ)の必要性:
- 生産者物価指数(PPI)が予想を遥かに超えて急騰するなど、インフレが悪化している明確な兆候があります。
- 本来であれば、FRBはこのような強いインフレを抑えるために金利を引き上げるべきです。シフ氏は「会話は利下げではなく、利上げはいつかということであるべきだ」と述べています。
景気後退への懸念(利下げ)という圧力:
- 一方で、経済は弱まっています。具体的には、雇用統計が大幅に悪化し、過去の数値も下方修正されるなど、労働市場が明らかに弱体化しています。
- 景気が悪化している状況で利上げを行うと、企業や個人の借入コストが増加し、景気をさらに冷え込ませて本格的な不況に陥るリスクがあります。
また、トランプ政権下でも財政赤字は拡大しており、7月の財政赤字は過去2番目の大きさであったことを指摘します。関税収入ではこの赤字を埋めることはできず、そもそも大統領令による関税は違憲であり、いずれ裁判所によって覆される可能性が高いと述べています。
FRBが「利下げせざるを得ない」理由
この矛盾した状況下で、シフ氏はFRBが最終的にインフレ抑制よりも景気後退の回避を優先すると予測しています。
その理由は、政治的・経済的な圧力です。景気が悪化し失業者が増えると、政府や国民からの批判が強まります。特に、トランプ政権はFRBのパウエル議長を「経済を悪化させている」と非難しており、利下げをしないことを公然と批判しています。
シフ氏の見立てでは、FRBはこの強い圧力に抗しきれません。インフレが悪化しているにもかかわらず、弱体化する労働市場と経済を支えるという名目で、最終的には利下げに踏み切らざるを得ない状況に追い込まれる、ということです。
この行動こそが、インフレをさらに悪化させ、米ドルの価値を毀損し、結果的に金(gold)のような実物資産の価値を高める、というのが彼の主張の結論です。