Eurodollar Universityの動画「Europes Largest Bank Exposes the Truth About China’s Financial Crisis」を分析しました。(動画再生回数は、2日で4万回以上)
この動画の核心的な主張は、香港と中国本土で深刻な「信用危機」が進行中であり、それはパンデミック後の世界経済に対する根本的な誤解、すなわち「致命的な欠陥(fatal flaw)」に起因しているというものです 。
ヨーロッパ最大の銀行であるHSBC(香港上海銀行)が公表したデータは、この静かに進行する危機の深刻さを浮き彫りにする象徴的な事例として取り上げられています。(写真:HSBC世界本部ロンドンHSBCタワー:Wikipedia)
(上のアイコンにリンク先動画)
分析概要
香港で起きている金融市場の異常
動画はまず、HSBCが香港の商業用不動産向け融資ポートフォリオの約73%を「リスクが高い」と分類した衝撃的な事実を提示します。これは、わずか1年前の30%未満という数字からの劇的な悪化です。この背景には、香港の金融市場で起きている一見不可解な現象があります。
超低金利と香港ドル安の併存
香港の短期金利はゼロに近い水準まで低下しているにもかかわらず、香港ドルの価値は下落し続けています。キャリートレードの不在
通常、このような金利差があれば、低金利の香港ドルを借りて高金利の米ドルなどに投資する「キャリートレード」が活発化するはずです。しかし、現在その動きはほとんど見られません。
これらの事実は、投資家が極度のリスク回避姿勢を取り、低金利の資金を活用するどころか、香港から資金を流出させていることを示唆しています。その根底にあるのが、不動産市場の不振です。大手デベロッパー「新世界発展(New World Development)」の資金繰り問題は氷山の一角であり、銀行セクター全体に信用不安が広がっています。
より深刻な中国本土の状況
香港の状況は中国本土で起きていることの縮図に過ぎず、本土の信用危機はさらに深刻だと論じます。中国の銀行融資は記録的な落ち込みを見せており、7月の新規融資額は過去20年以上で最悪となりました。
この世界的な混乱の根源には、動画が「致命的な欠陥」と呼ぶ、世界共通の誤解があります。それは、パンデミック後の経済回復が持続可能で力強い本物だという幻想です。実際には、それは政府の大規模な財政出動が生み出した一時的な「価格の幻想」に過ぎませんでした。
中国の習近平指導部もこの「力強い世界経済」を前提に、国内の不動産バブルなどの問題処理に乗り出しましたが、その前提が崩れたことで、かえって経済を悪化させてしまいました。
効かない中国政府の景気刺激策
中国政府は「バズーカ砲」と称される大規模な景気刺激策を何度も打ち出していますが、全く効果を上げていません。その理由は、銀行システムが機能不全に陥っているためです。
信用危機に陥った銀行は、リスクのある民間企業への融資を避け、安全資産である国債ばかりを購入します。政府が景気対策のために国債を増発すればするほど、銀行はその国債を吸収し、ますます民間への融資が滞るという「クラウディングアウト(crowding out)」現象*が起きているのです。中央銀行が金融緩和をしても、貸し手である銀行が動かなければ、経済にお金は回りません。
*「クラウディングアウト」:失業対策などのために大量に発行した新発国債が市中金利を高騰させ、民間の経済活動に抑制的な影響を与えてしまう結論:世界経済への影響
香港と中国で起きている信用危機は、単なる地域的な問題ではありません。それは世界経済が「成長の仕方を忘れた(forgot how to grow)」ことの現れであり、世界中に影響を及ぼします。この深刻な信用収縮は、世界的な需要を押し下げ、結果として長期的な金利の低下をもたらすだろうと、動画は締めくくっています。